アイカ工業(本社・名古屋市中村区、小野勇治社長)は6月30日、化成品の東日本向け製造拠点である福島工場(福島県鏡石町)で危険物立体自動倉庫(写真)を竣工し、今月1日から稼働を開始した。総投資額は約7億円で、同社工場における危険物自動倉庫の設置は初めてとなる。これにより、消費地近くの倉庫で保管していた関東向けの化成品在庫を、新設の危険物自動倉庫へ集約し、“生産立地型物流拠点”として東日本エリアへのスピーディかつ安定的な製品供給と物流コスト低減を実現する。
完成した危険物自動倉庫は村田機械製で、延床面積702㎡、高さ19m、収容能力1458棚。クレーン3基を備え、6間口で搬出入作業が行われる。消防法危険物第2類および第4類に対応し、梱包形態に合わせた3種のパレットによる保管が可能。庇付きの広い荷捌き場を備えることで作業性も高めた。安全・BCP対策として、地震到達前に設備が自動で緊急停止する「地震速報P波連動自動制御システム」も導入。地震到達時には制震ダンパーが地震エネルギーを吸収してラックの揺れを抑えるとともに、制震ストッパーが荷物の挙動を制御する制震構造も採用した。
従来、福島工場で生産された東日本向けの化成品製品は、東北向けを直送便で発送する一方、一大消費地である首都圏向けは、関東の外部倉庫に一旦在庫を保管することで迅速な商品供給に対応してきた。しかし、福島工場から在庫拠点への横持ち輸送が発生していたことから、今回、危険物自動倉庫を新設して製品在庫を集約。拠点間輸送や複数倉庫への入出庫作業を無くすことで、物流の合理化と物流費の圧縮を図る。
併せて、福島工場の構内業務を全面的に見直し、さらなる物流効率化を推進。危険物自動倉庫への自動ラック設備導入により、入出庫や荷役業務を自動化・省人化して出荷業務全体の労務時間短縮と出荷ミス削減につなげる。今期中には、危険物自動倉庫と周辺の平屋倉庫へWMSを試験導入し、入荷の受付や検品・検収、入庫などの作業を効率化。同システムは2年内をメドにアイカ工業の国内全生産拠点へ展開する計画にあるという。
同社では、人手不足問題を背景とした物流費の上昇を受け、2014年より抜本的な物流改革に着手。その一環として、自社配送ネットワークの構築を進めた結果、福島工場から東日本エリアへの輸送時間が短縮されたことで、今回の在庫集約が可能となった。また、IT化やインターネット化などで納品先からの受注精度も向上しており、「これまでの受注即日納品ではなく、工事計画に基づいて受注翌日に、確実に納品できれば間に合うようになったことも要因のひとつ」(安川浩保・物流部部長)という。
「物流戦略は非常に重要な位置づけ」と小野社長
6月30日に執り行われた竣工式と起動式にはアイカ工業の小野社長、百々聡取締役専務執行役員、鏡石町の遠藤栄作町長ら関係者が出席した。
式典前に行われた記者会見で小野社長は「当社は売上高の(約6割に当たる)1100~1150億円が国内事業で、売上高物流費率は年々上昇しており、以前は4%程度だったものが直近では6%近くに達している。お客様に満足していただけるお届けとコストを両立する考え方が企業として重要になる中、当然、(今回の危険物自動倉庫のような)経営資源の投入についても研究開発や設備投資、M&Aと匹敵し得るような考えを持っている。物流戦略は非常に重要な位置づけにあるということ」と改めて強調した。
アイカ工業では、長期ビジョンである「アイカ10年ビジョン(17~27年度)」においても、「グループ連携・事業基盤強化」への施策のひとつに「生産・物流体制の最適化」を掲げており、物流戦略が同ビジョンの達成に大きく寄与するとの位置づけにある。
(2020年7月7日号)
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July 07, 2020 at 07:00AM
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